早く家に戻って勉強をしよう。


そう思ったときだった。


自転車に乗った数人の女の子たちがあたしたちの横を通り過ぎて行った。


「あの人たち、カッコいいね」


「本当だ。でも彼女もちじゃん」


「帽子かぶってる人の方が断然カッコいいよ」


明彦と京一郎を見てそんな会話をしているのが耳に入ってきた。


「京一郎がカッコいいって。よかったね」


この美がそう言い、京一郎を茶化す。


「そんな事ないだろ。明彦も十分カッコいいって!」


そのやり取りがわざとらしく感じられ、あたしはイラつきを覚えた。


確かに京一郎は学年で1位と言われるほどカッコいい。


そんな京一郎に明彦は勝てない。


ルックスでも、成績でも、明彦は京一郎には勝てない……。


この美と京一郎の笑顔で、自分たちが笑われているように感じられた。


何もかも負けているカップル。


そう言われているような気がした。


「明彦、今日はもう帰るね」


「え? あ、あぁ」


どうしてあたしがイラついているのかわかっていない明彦は、首を傾げてそう言うだけだったのだった。