「どうかしたの?」


「いいや。なんだか知世がホワイトタイガーに見えて」


そう言い、笑う明彦。


「それってどういう意味?」


「爪を出していない時は可愛いけど、爪を出すと大変なことになるって意味」


明彦が冗談っぽくそう言うので、あたしの心臓はドクンッと大きく跳ねた。


まるであたしの性格を見透かしているように感じられた。


でも、明彦の前で店員へクレームを入れる事はない。


あたしがやっていることはバレていないはずだ。


手を繋いで移動しながら、あたしは明彦の様子を気にしていた。


明彦はさっきの発言を気にする様子も見せない。


やっぱり、ちょっと冗談で言ってみただけのようで、深い意味はなさそうだ。


「なに味がいい?」


そう聞かれて我に返ると、目の前にソフトクリーム屋の列ができていた。


パンフレットを確認してみると《連日売り切れのソフトクリーム!》と、書かれている。


他にもソフトクリームを売っている場所はあるけれど、ここだけ大人気のようだ。


「あたしはバニラ」


「じゃぁ、俺はミックスを頼もうかな」


看板に出ている味を確認して明彦は言った。