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コンビニを出ると、花梨はさっそくヒヨコケーキを取り出した。


駐車場内で食べるつもりらしく、入口から少し離れた場所で座り込んだ。


「あ~あ、ヒヨコの目が……」


花梨が少し残念そうにつぶやく。


「変えてもらえばいいのに」


あたしがそう言うと、花梨は左右に首を振った。


「店員さんに悪気があったわけじゃないし、味は変わらないんだから」


花梨はそう言い、ヒヨコケーキを一口食べた。


そして美味しそうに頬を緩ませる。


あたしなら怒鳴っても正当だと思える時には必ず怒鳴っておくのにな。


そう思い、ジュースを飲んだ。


「そういえば、花梨って怒らないよね?」


そう聞くと、花梨は口の中にケーキを含んだまま「へ?」と、聞いて来た。


「落ち込んでもすぐに切り替えるし、そう言う所すごいなって思う」


数学の点数が悪かった時も、花梨はすぐに切り替えていた。


「そうかな? 怒るのって、なんだか怖くない?」


「怖いの?」


「うん。嫌な事があって、それを相手に伝えても相手は理解してくれないかもしれない。


怒っているあたしを見て、余計に怒るかもしれない。なんか、いろんなことを考えちゃうんだよね」


花梨はそう言い、空を見上げた。