気が付けばあたしは自分の部屋にいた。


体にできたアザはもう消えている。


今日は何月何日だっけ?


学校は?


ちゃんと勉強して、いい大学に入っていい会社に就職しなきゃ。


お父さんみたいに、なにもかも譲るような大人にはならないんだから。


そうだ、学年トップ。


次こそは学年トップをとらなきゃ。


ブツブツと呟きながらベッドから下りると、途端に目の前に花梨のお姉さんが現れた。


「あんたって本当に最低な人間。あんたこそ欠陥品よ!!」


その言葉に導かれるようにして、今まであたしがクレームを入れて来た人たちが現れる。


「本当最低だよな」


「お前がどれほどの人間なんだよ」


「あんたのせいであたしの人生はメチャクチャよ」


そんな言葉が脳内でこだまする。


あたしはその場にうずくまり、頭を抱えた。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!! クレームなんて、もう二度としません!!!」


それでも声は鳴りやまない。


心配して駆けつけたお母さんがあたしの肩を抱く。


それでも目の前の幻覚は消えない。


「許してください! もうしませんから!!!!」


あたしは叫び、床に頭をこすり付けて土下座した。


「花梨、もういいのよ。もう謝らなくていいの……!!」


お母さんがあたしを抱きしめながら涙を流す。


「ごめんなさい! もうしません! 店員さんを尊敬していますから!!」


いつまでも消えない幻覚と幻聴の悪夢の中、あたしは自分が二十歳を超えた事も気が付かず、何年も何年もこの部屋の中で土下座をし続けていたのだ。


「知世お願い! 目を覚まして!!」


お母さんの悲痛な声が部屋の中に響き渡った……。







END