「京一郎! あんたあたしの彼氏だろ!!」


思わずそう叫ぶと、京一郎の口元が歪んだ。


「そうだね。お互いに都合のいい恋人になろうって決めたよね」


「そんな……! こんな状況でよくそんな事……!!」


「俺はあのノートで平仲さんの体を買ったようなもんなんだよ? 面倒くさい事に巻き込まれるのは勘弁してほしいなぁ」


京一郎はそう言い、ニヤニヤと笑う。


なんで?


あたしは京一郎になにもしてないのに……!!


そこまで考えてハッとした。


なにもしていない。


彼氏彼女になったのに、何の感情も持っていない。


それは京一郎も同じなのだろう。


あたしが京一郎のノートにしか興味がないように、京一郎はあたしの体にしか興味がないのだ。


今更そんな事に気が付くなんて、悔しくて情けなくて涙が滲んで来る。


果歩がまたあたしの頬を殴り、鼻血が出て来た。


このまま、あたしは真っ暗な闇の中へと引きずり込まれてしまうのだろうか……。