「俺が『名無し』だよ。平仲さん」


ニコッとほほ笑んでそう答える京一郎。


『名無し』……!!


「嘘……!」


「嘘じゃないよ。ちなみに『ミカン』はこっち」


京一郎が指を指した先に視線をやると、そこには果歩が立っていた。


いつもあたしに忠実なしもべだった果歩は勝ち誇った笑みを浮かべて、あたしを見下ろしている。


「な……んで……。なんであんたがここにいるの!!」


炎のような怒りが燃え盛り、果歩を睨みつける。


「だってこれ、『平仲知世被害者の会』だもん」


平仲知世被害者の会……!?


あたしは果歩の言葉に返事すらできなかった。


「最初に設立したのはあたしよ。覚えてる?」


そう言ったのは30代前半に見える長い髪の女性だった。


見覚えは全くと言っていいほどない。


「1年以上前、あんたが何度も何度も何度もあたしにクレームを入れたから、あたしは仕事を辞める事になったのよ!!」


そう怒鳴り、三村を押しのけてあたしの頭を踏みつけて来た。