「それなら、ノートを借りればよかっただけじゃないの? 明彦と別れてまで、どうして……!」


「違うの。明彦には京一郎みたいな向上心がない。一緒にいればあたしはどんどん明彦に引きずられて行っちゃう」


「それってダメな事? 好きな人と一緒にいる事で自分が変わるのって、普通だよ?」


花梨の考え方に今度はあたしが驚いた。


誰かの為に自分を変えるなんてありえない。


表面上を取り繕う程度ならわかるけれど、大事にしてきたものまで変えてしまうなんて絶対に許せない事だった。


そしてその大事なものはあたしにとっては勉強なんだ。


「あたしは学年トップになりたい。明彦と一緒にいるよりも京一郎と一緒にいた方がその可能性は高くなる」


「それはそうかもしれないけど、そんな事で彼氏を変えちゃうなんておかしいよ!!」


花梨はそう言い、勢いよく立ち上がった。


まだお弁当は残っているのに、もう食べる気はなさそうだ。


「『そんな事』……?」


あたしは花梨を見上げた。


自分でも、自分の表情が険しくなっている事が理解できた。


相手は花梨だ。


でも、もう止められなかった。