そんな事を冷静に考えている自分と、目の前の店員を怒らないと気が済まない自分がいた。


店員は何度もあたしに頭を下げ、10円を差し出してきた。


あたしはその10円玉をはらい落としたんだ。


驚いた表情を浮かべる店員に対し「あんたが拾ってよ」と、冷たい言葉を吐きかけた。


店員はしどろもどろになりながら表へ出てきて、あたしの足元に転がった10円玉を拾った。


それはまるであたしに向かって土下座をしているように見えて、あたしの背筋はゾクゾクとうずいた。


最高の心地よさが体中を駆け巡り、頬がにやけてくる。


そうやってわざと店員に意地悪をした後受験勉強を再開すると、驚くほど簡単に問題が解けていったのだ。


今まで理解できなかったのが嘘のようで、自分でも信じられなかった。


今思えば店員を怒鳴り散らす事でいいストレス発散と気分転換になっていたのだとおもう。


その日から、あたしはクレーマーになったのだ。


嫌な事がある度に、いろんな店員を怒鳴り散らしてきた。


するとその後は頭がスッキリし、嫌だった物事もすんなりと受け入れる事ができた。