果歩は転げるようにして玄関に入ってきた。


あたしはそのまま鍵をかけ、果歩の頬を思いっきり殴った。


果歩は一瞬何が起こったのか理解できなかったようで、キョトンとした表情を浮かべている。


その内鼻血が出てきて、果歩の表情は見る見るうちにこわばっていく。


「誰が半年前のCD買ってこいって言ったんだよ」


声を低くしてそう言うと、果歩は小刻みに震え始めた。


「ご……ごめんなさい」


反論するでもなく、素直に謝る果歩。


その様子を見ていると、やはり果歩は関係ないと感じられた。


ちょっと大きな声を出せば近所に助けを求めることもできるこの状況で、グッと押し黙っている。


あたしが日頃から植えつけ続けている恐怖心は、まだちゃんと果歩を縛り付けている。


「本当、お前って役立たずのクズだな!!」


唾を吐きかけるように罵倒すると、果歩の目に涙が浮かんできた。


「ごめんなさい……」


「デブでブスでバカでクズ。あたしが時々こうして一緒に遊んであげてるから、人間としていられるようなもんでしょ」


あたしはそう言い、大きな声で笑った。