「そうなんだ……」


驚き過ぎて返事にも困ってしまう。


「それでね、知世と別れたらしいってクラスメートの子からメールで聞いて、電話したの」


そうだったのか。


あたしと明彦が別れたなら、この美が明彦と付き合えるチャンスになるんだ。


「でも、この美には京一郎がいるじゃん」


あたしがそう言うと、この美はまた視線を下げた。


「京一郎はなにもかも完璧で、あたしにじゃ釣り合わないから……」


「この美だって女子の中では学年1位なのに?」


あたしは嫌味を込めてそう言った。


するとこの美は今にも泣きそうな表情であたしを見て来た。


「京一郎に釣り合うために、毎日毎日頑張るの疲れちゃったんだよね。それに対して明彦はなんでも自由で縛られてなくて、優しくて。


正直、あたしは知世が羨ましかった」


あたしの事が羨ましい?


ライバルであるこの美にそんな事を言われるなんて思ってもいなかった。


あたしはずっとこの美が羨ましいと思っていた。


あたしが狙っていた学年1位を取り、京一郎に勉強を教えてもらえているこの美。


「あの……さ……」


一か八かの賭けだった。