その後、あたしと明彦は目も合わさずそのまま放課後になっていた。


人の喧嘩をのぞき見していた人物もわからないままだ。


「知世、今日は大丈夫だった?」


「あたしなら大丈夫だよ。明彦があの後ちゃんと誤解を解いてくれたしね」


そう言い、あたしは花梨へ向けてほほ笑んだ。


屋上から戻った後、明彦はさすがに悪い事をしたと思ったのか、クラスメートたちにあたしは悪くないと説明してくれたのだ。


「それならよかった」


花梨がホッとしたようにほほ笑む。


果歩もいつも通り登校してきて、京一郎とも距離を置いている。


あれほど痛めつけてもあたしに反抗してくる気配はないから、ほっておいても安心だ。


それなのに、なんだかわからない胸騒ぎがしていた。


何の問題もないいつもの日常が、自分の知らない所で崩れていくようなそんな胸騒ぎ……。


「知世、帰るよ?」


花梨にそう言われ、あたしは鞄を手に立ち上がったのだった。