たったそれだけの書き込みにあたしの思考回路は完全に停止した。


特定しました。


それはあたしが誰かを特定した。


そういう意味に受け取れる書き込みで、あたしは背中に汗が流れていくのを感じていた。


しばらくその書き込みをみていたあたしだけれど、ハッと我に返って次の書き込みを確認し始めた。


みんな名無しの書き込みに反応している。


《ユキ;名無しって誰? 特定ってクレーマーちゃんが誰かわかったってこと?》


《サキエ;クレーマーって誰なの? あたし教えてほしい!》


《ケイゴ;俺も知りたい! 失恋中のクレーマーちゃんを慰めに行こうぜ!!》


そんな書き込みが続くが名無しと名乗る人はその後一度も出てこず、結局みんなも名無しの言葉を冗談だと思って反応しなくなっている。


あたしは肩の力を抜いて息を吐き出した。


名無しが本当にあたしの事を特定していて、ここに書き込みなんてしていたら大変なことになっていたかもしれない。


でも、それも取り越し苦労だったようだ。


人気のあるあたしに絡むことで注目されたかったのだろう。


あたしはそう思い、パソコンを閉じたのだった。