「そうだよね? その内だんだん京一郎の方が素敵だなって思い始めちゃって……」


「どうしてそうなるの? 好きな人と誰かを比べて、いくら相手の方が好きでもやっぱり彼が一番って、ならない?」


花梨はまるであたしに説得するようにそう言ってくる。


あたしは左右に首を振った。


「普通なら、そうだったんだと思う。だからあたしが京一郎に傾いてしまったのは明彦への気持ちが薄れていたからだと思うんだよね」


「知世……」


花梨は辛そうに表情を歪める。


他人の恋愛話を聞いているだけでここまで一喜一憂してくるなんて、花梨は自分の成績を理解しているんだろうか。


思わず課題ができるのか聞きそうになり、すぐに口を閉じた。


今課題の話なんて出したら花梨は混乱してしまう。


「一緒にいる事で嫌なところもどんどん見えてきて。あたしはそれに我慢ができなくなってきてたの。明彦はなにも悪くないのにね……」


あたしはそう言い、嘘泣きをして鼻をすすった。


「知世、泣かないで」


花梨が慌てて花柄のハンカチを渡して来る。


あたしはそれで涙を拭いて、花梨へ向けてほほ笑んだ。


「ありがとう花梨。いつもあたしに優しくしてくれて、うれしい」


「そんな……あたしは知世の親友だもん! 知世が誰を選んだとしても、あたしは応援するから!」