「花梨ご飯食べないの?」


「食べるよ。ちょっと、ビックリしちゃったけど……」


花梨はそう言い、ようやくお弁当に箸を伸ばした。


それから花梨は終始無言でご飯を食べていて、いつもの様子とは違っていた。


それがあたしのせいだとわかっていたから、あたしは何も言わずただお弁当を食べているだけdった。


そしてふと視線を泳がせると、教室の隅で京一郎と果歩が何か話をしているのが目に入った。


会話までは聞こえてこないけれど、果歩は頬を染めているのがわかった。


その瞬間、あたしの中で何かがブチッと切れる音がした。


どうして京一郎と果歩があんなに仲良く会話をしているか、信じられなかった。


あたしは京一郎と果歩の会話が終わるのを待って席を立った。


「ちょっとトイレに行ってくるね」


花梨にそう声をかけ、教室を出る果歩を追いかけた。


女子トイレに入る寸前に後ろから「果歩」と声をかけると、果歩は青ざめた顔で振り返る。


あたしは果歩の手を掴み強引に車いす専用トイレに引きずり込んだ。


時々しか利用する生徒のいないトイレは、よくイジメの現場になっていることをあたしは知っていた。