僕の小さなお姫様

「あ、あのさ。一つ聞いてもいい?」

「は、はい?」

私は、軽く先輩の方を振り返る。

「名前なんて言うの?」

「名前ですか?私は、稲美永久って言います」

「稲美永久!」

先輩は、何故か嬉しそうな顔を見せた。

な、何で喜んでるの?

「でも、その様子からじゃ僕のこと覚えてないか…」

「えっ?」

先輩、今なんて?

「永久は、一年生だよね?」

「は、はい!」

「そろそろ行かないと、入学式始まっちゃうよ」

「あっ!」

私は、腕時計を見る。

(やば!そろそろ行かなくちゃ)

私は、先輩に向き直り頭を下げる。

「えっと、ありがとうございました!それでは、私行きますね」

「うん、またね永久」

あ、そうだ。

私は、あることを思い出して先輩に聞く。

「先輩の名前教えてください」

「僕?僕は、煌時雨だよ」

煌時雨…。

どこかで聞き覚えのある名前だった。