私は、校門へと向かう。

だけど、予想通り人がたくさんいて前に進める状況ではなかった。

「これはまた…」

身長の低い私にとっては、苦痛の光景だ。

だって、これはちびにとっては不利だからだ。

「これじゃぁ、クラス見れないよ」

念のため飛び跳ねてみるが、やっぱり見えない。

「はぁ…。入学式まで時間あるし、ちょっとその辺散歩して来ようかな」

私は、校門から離れて、学園の裏へと来た。

「ここは静かなんだなぁ」

それはそっか、これから入学式だし、先輩たちだってここにはいないか。

歩き続けた時、私の目の前を一枚の桜の花びらが舞った。

「ん?」

花びらが舞ってきた方向を見た時、私は目の前の光景に目を見開く。

「き、綺麗…」

私の目の前には、一本の大きな桜の木が立っていた。

周りには何もなくて、桜の木が静かに風に揺れていた。

「こんなところに、こんな場所があるなんて」

その時私の中では、あの遊園地で男の子と見た桜の木を思い出していた。

「似てる、あの桜の木と」

私は、桜の木に手を当て目をつぶる。

耳を澄まして、桜の木が揺れる音を聞く。

「なんか、元気出てきた」

私は、桜の木を見上げる。

「また、ここに来るね」

と、その時――。