「先輩、どこに行くんですか?」

「ちょっとね…」

先輩に連れて来られたのは、保健室だった。

先輩は、私をおろすとブレザーを私にかけてくれた。

「そんな姿じゃ帰れないから。だから、着替えなよ」

「あ、ありがとうございます」

先輩の匂いがする。

「じゃぁ、僕は行くね」

「え!」

「僕は、今君の傍に居られないから」

その言葉が私に刺さった。

「時夜のことは、ごめんね。次は、あんなことさせないから」

待って…。

「着替えたらすぐに帰りなよ、もう迎えが来ているころだろうし」

待ってください……。

先輩は、私に背を向けたままだった。

私が、先輩を拒絶したんだと思われてるんだ…。

「それじゃぁ、またね」

「待って!!」

私は、先輩のカーディガンを掴む。

「どうしたの?僕がいたら着替えられないよ」

「い、行かないでください!」

私の今とってる行動は、矛盾だらけだ。

先輩に顔を見せたくなくて、でも今は先輩に傍に居てほしいと思ってる。

「さっきはごめんなさい。私は、先輩に顔を見られたくなかったんです…」

「どうして?」

「先輩が私を嫌うと思ったからです。時夜君にあんなことされて、先輩に合わせる顔がなくて…」

「……」

先輩は、何も言わず話を聞いてくれていた。

「先輩は、私を好きっていってくれて、あの言葉本当に嬉しかったんです。来てくれたとき、安心したんです」

私のとった行動で、先輩が怒るのは私のせいだ。

「先輩……。傍に居てください…。嫌いにならないでください……」

私の頬に涙が伝った。