「兄貴も本当に馬鹿だよな」

「先輩は、馬鹿なんかじゃ「馬鹿だよ!!!」」

時夜君の声の大きさに、私はビクッとなってしまった。

「あいつは、馬鹿だよ。大馬鹿だ、好きな女を守れないんだから」

時夜君は、なんらかの理由で先輩を恨んでいる。

だけど、何でそんな傷ついた表情をするの?

「でも、お前のキスは俺のものだ」

「キスの一回や二回どおってことないわよ!時夜君が何て言おうと、私は先輩が好きなんだから!」

「なら、もっと凄いことをしないと分からないみたいだな」

時夜君は、再び私に近づき、私の制服に手を伸ばす。

「な、何するの?!」

「言っただろ、もっと凄いことするって」

逃げようとしたけど、走って逃げてもこの距離では捕まってしまう。

時夜君は、私の手首を掴む。

そして、私の頭上で手をおさえつける。

「いや、離して!」

「黙れ!!」

時夜君は、リボンを取ると投げ捨てる。

怖い…助けて先輩。

「兄貴がお前のこんな姿を見たら、何て思うだろうな」

「!」

私の頬に涙が伝った。

先輩には、こんな私の姿を見られたくない。

だけど、このままだと…。

「時雨!!!」

私が先輩の名前を呼んだとき、こちらに向かってくる足音が聞こえた。

「永久?!!」

「きたきた…」

先輩は、私たちを見つけると、一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにいつもの表情に戻る。

だけど、少し様子が変だった。