「先輩は、あのゆーー」

その時、どこからかピアノの音色が聞こえてきた。

「ピアノ?」

「さっきの音楽室からかな、」

「弾いているのは、時夜だろう」

「時夜君が?」

先輩の顔を見たとき、私はドキッとした。

「悲しい音色だ…」

先輩は、とても悲しい表情をしていた。

(先輩…)

先輩と時夜君の間で、何があったのかな?

「ごめんね、話しそれちゃったね」

「え、えっと…」

今の先輩には、聞けない…。

「そ、その…。先輩の好きな食べ物ってなんですか?」

「えっ?」

「はっ!」

いい言葉が出てこなくて、とっさに好きな食べ物を聞いてしまった。

(もう!私ったら何聞いてんの?!)

「ありがとう…」

「今なにか言いましたか?」

「ううん。僕の好きな食べ物は、クレープだよ」

「クレープですか?」

ちょっと意外過ぎて驚いてしまった。

でも、何でクレープ?

「おっと、もうこんな時間か、そろそろ戻ろう」

「は、はい」

私たちは、先輩の後ろをついて歩く。