お父さんとお母さんが居なくなって、私は一人遊園地の入口近くにあるベンチに座っていた。

「嘘つき…」

私の目に涙が溢れてきていた。

「今日は…、ずっと遊べるって言ってくれたのに…」

何でお父さんとお母さんは、私の傍に居てくれないんだろう。

仕事が忙しいのは分かっていたけど、幼かった私はそれを理解することは難しかった。

「普通の家族なら良かったのに…」

お父さんの仕事は、稲美グループの社長。

お母さんの仕事は、海外ブランドの服を出している稲美ブランドの社長。

そして、私はそんな二人の娘。

いわゆる社長令嬢だ。

「パパもママも嫌いだ…」

私は、声をこらえて泣き始めた。

その時――。

「ねぇ、どうしたの?」

「えっ?」

すると、私の目の前に綺麗な青い瞳が私を見つめていた。

「キラキラ…」

「え?」

「な、何でもない!」

私は、すぐに涙を拭って立ち上がる。

「もしかして、君一人?」

「…。パパとママと居たけど、お仕事で忙しいから」

「ふーん。じゃぁ、僕と同じだね」

「え?」

男の子は、私に手を差し出してくれた。

「良かったら遊ばない?」

「え?いいの!」

「うん、一人より二人の方が楽しいよ!」

私は、男の子の手を握った。