僕の小さなお姫様

「だってさ、行こう永久。あ、私のことは架純でいいよ」

「分った架純」

呼び捨てにされるのは、お父さんとお母さん以外で初めてだ。

いや、その前にあの先輩が私の名前を呼んでいた。

(聞き覚えのある名前だったけど、会ったことがあるのか?)

会ったことがあるとするなら、遊園地で会ったあの男の子。

でも、なんかそんな気がしない。

「なぁ、永久は知ってる?」

「何を?」

「この学園の会長のこと」

「会長?」

会長ってことは、生徒会長のことかな?

この学園にも一応生徒会っていうのは存在するのか。

「会長がどうしたの?」

「実はね、この学園の会長すっごく怖いんだって」

「えっ!」

こ、怖いってどういうこと?

「それに、その会長この学園の理事長の息子なんだって」

「へ、へぇー…」

どうしよう、怖い人苦手なんだよね。

お化け屋敷とかも。

「でも、これ噂だから。はっきりしたことはよく分からないけど」

「う、噂なら、分かんないね」

私的には、怖い人だったら関わりたくない。

体育館の入口前まで来て、私たちは先輩たちに迎えられる中、体育館に入場を始めた。

私は、周りの人に気づかれないように、あの時雨先輩を探した。

確か三年の先輩だったよね?

あの髪の色だから、すぐに見つかるかと思っていたけど、先輩の姿は見当たらなかった。

「永久?誰か探してるの?」

「え?いや、何でもないよ!」

「そう?」

とりあえず、先輩のことは忘れて、私はパイプ椅子に座る。