居場所をください。




「澤田さんは私にすごく厳しいし

だけど長曽我部さんと五十嵐さんはすごく仲も良くて…


貴也くんのことも私は小さい頃からずっと好きだったのに

全く会えなくて…なのに五十嵐さんはすぐ仲良くなって


デビューして間もないのにあんまマンションにも住めて


全てがうらやましかった。

妬ましかった。」



「沙耶香、全てが羨ましいといってるけど

美鈴からしたら実家住まいの沙耶香の方が

ずっと羨ましいと感じてるはずだ。


親がいなくて、住むところがなくて

帰っても誰もいないあのマンションがいいと

美鈴に対して本気で思ってるなら

それはただの嫌みにしかならない。

甘えられない現実を知らないからそんなことが言えるんだ。


甘えられる現実しか知らないから

お前は美鈴が苦労していないと言えるんだ。


言っとくけど、俺は澤田よりも厳しい。

プライベートにもすごく干渉する。

沙耶香よりも美鈴の方がずっと自由がない。


短期間でデビューさせるために

他人よりレッスンだってずっと厳しかった。


美鈴はただそれに耐えてきただけだ。

もう捨てられたくないと言ってな。

捨てられた恐怖があるから、嫌われたくない

見捨てられたくないと必死になって頑張ってきた。


だけど沙耶香は稽古をサボったこともあるな。

現場に遅刻したこともあれば

台詞を覚えてこないことも少なくない。

結局お前は甘えてるんだよ。

見捨てられる恐怖を知らないから。


ここは実力社会だ。

いくらグランプリをとったからといっても

言われたことをしっかりやらないやつは

容赦なく見放す世界だ。


そんな冷たい世界にいることを忘れんな。」


長曽我部さんがそういうと

赤堀さんは大泣きした。