「貴也さ、沙耶香と会ってるわけ?」


美鈴がいなくなると、長曽我部さんが言った。


「……………会ってないです。」


「噂も仕事だ。しっかりやれよ。

じゃなきゃ美鈴にコクんなよ。」


「俺はそんな噂なくても

絶対ヒットさせてみせますよ。」


「……………すげー自信だな。」


「俺はもう嘘は嫌なんで。

偽ってばかりの自分が。


他の女と会いながら美鈴に告るなんて

そっちのができません。

兄として、そんな男が近くにいていいんですか?」


「言ってくれんじゃん。

30億「50億。」


「は?」


「興行収入50億目指しますよ。」


あの脚本なら、いける。


「……………わかった。

50億いかなかったら

次からはきっちり偽ってもらうからな。」


「はい。」


やってやろーじゃん。

絶対な。


「というわけで美鈴は俺がもらいます。」


「隼也を忘れんなよ。

世間では彼氏は隼也だからな。」


「負けません。」


「……………社長には俺から言っとくわ。

根性見せろよ。」


長曽我部さんはそういって降りていった。