『えー、高橋、さゆりちゃん
結婚おめでとう。
余興の話をもらったとき、なにやろうかなってちょっと悩んだんだけど、私にできることなんて限られているので、私は私にできることで祝福しようと思います。
みなさんもぜひ、手拍子とかお願いします!
それでは、五十嵐美鈴でCongratulations!です』
五十嵐美鈴、な。
さっきは松野で名乗ってたのにな。
美鈴がそう案内して一旦マイクを下ろすと、すぐに会場が暗くなった。
かと思えば美鈴はゆっくりとステージ横へと移動して
会場が真っ暗なまま
美鈴にライトが当たらないまま
『今日の君はいつもの君より
何倍にも輝いて見えるよ』
アカペラで、そう歌い始めた。
そこから音楽が流れ始め、そして照らされたステージには
まだ髪の毛が黒かった頃の美鈴と、一高の制服を着た瑠樹の写真がゆっくりと映し出された。
そこからも美鈴にはライトは当たらないまま、ゆったりとした音楽が流れ始めた。
その音楽に合わせるかのように、写真は出てきたアルバムにしまわれ、次のページから出てきた写真も美鈴と瑠樹で
1ページ1ページ、アルバムがめくられてはその写真が拡大されていった。
本当、ひとつのミュージックビデオみたいに。
だけど、突然瑠樹のワンショットが映し出されたところで
『いつかのやさぐれてた君
毎日同じことの繰り返し
そんなつまんない君だったはず』
美鈴はそう歌い始めた。
ゆったり、ゆったりと瑠樹だけの写真が流れる中
『そのはずだったのに
今日の君は僕が知る限りね
今までで一番 輝いているよ』
明るい美鈴の歌声が流れていく。


