居場所をください。




『今までずっと交友関係を閉ざしてきた高橋ですが、さゆりちゃんだけは交際してすぐに私へ紹介してきました。
その時は珍しいこともあるんだな、程度にしか思っていませんでした。

でもきっと、さゆりちゃんは高橋の中でとても特別な存在で、隠し事はなにもしたくなかったんだなとすぐに気づきました。
そしてさゆりちゃんは私の歌を好きだといってくれました。私のことを応援していると言ってくれました。
そんなさゆりちゃんは普段から、私を特別扱いしません。ちゃんと一人の人間として、私を見てくれているというのが伝わってきてとても嬉しくなりました。

きっとそんなさゆりちゃんを高橋はちゃんとわかっていたんだなって思うと、二人は交際をはじめる前からきっと深い信頼関係が築けているんだなと思えてきて、そんな関係性がとても羨ましく思えます。

こんなに綺麗で、こんなに素敵な人が高橋に恋をしてくれて、私も自分のことのように嬉しいです。


さゆりちゃん、これからも末永く高橋のことをよろしくお願いします。そしてさゆりちゃんのいれるコーヒーがとっても好きなので、ぜひまた私にも淹れてください。』


・・・ここにきて、笑いをいれるか?おい。
けっこうみんな静かに聞き入ってたぞ?おい。

私にも淹れてくださいって。なんだそりゃ。


『そして高橋!
そこから見える景色はどんな風に映っていますか?
その景色を誰にも譲らないよう、守り抜いてください。

それと、いつでもご飯食べに来てください。
もちろん、二人揃ってね。


……なんでもない朝がなによりも幸せだということを忘れず、家族がいる幸せを、二人で築き上げていってください。
そして素敵な明日を、二人で迎えてください。

つたない話ではございましたが、以上をもちましてお二人へのご結婚のお祝いの言葉とさせて頂きます。
御清聴いただきありがとうございました。

本日は、本当におめでとうございます。』


最後にちょっとだけ会場に笑いを添えつつ、最後の最後で美鈴はちょっとだけ声に涙を含ませつつ言った一言が、きっと多くの人の心に刺さった。

家族がいる幸せ、なんでもない朝
そんな当たり前を忘れてる人が多い世の中だから。