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「…どうかした?」
夜、もう寝室に入って寝るまでの一時、俺はボーッとしていたことに、里美に話しかけられてやっと気づいた。
「んー、わかんね。」
「はは、なにそれ。」
「里美ってさ、家に仕事持ち帰らないよな。
父さんも俺がガキの頃から家に仕事を持ち帰らなくて
仕事の話なんか絶対しなかったし、里美もしないじゃん?
その切り替えってどうやってんの?」
「えー、わかんないよ。
逆にさ、仕事中もプライベートのこと考えたりもしてるから、仕事よりもプライベートなのかも。」
「たとえば?」
「んー、勤務中に弘希の成績のこととか、今日のご飯なにしようとか、ひかるといつ休みが被るかな、とか。
だから私もちゃんと切り替えてるわけじゃないよ。
それに、家でも仕事とかしたくないもん。
だからひかるはよっぽど仕事が好きなんだね。」
「…なんか、俺がもう一人いりゃいいのにな。」
「なにそれ。」
「大切なもんだけ大切にできたらいいのにな」
どんどん一人で先に行ってしまう美鈴に追い付くこともできないし
美鈴の変化に俺の心がついていかない。
はやく大人になれ、なんて
俺は望んでねーのに。
「美鈴ちゃん?」
「んー…、うん。」
「はは。
ほんっとひかるって、美鈴ちゃんと弘希のことになると弱くなるよね。」
「それ、美鈴の旦那の貴也にも言われたわ。
最近さ、美鈴と弘希が仲良すぎてそれさえも寂しいんだよね。」
「……美鈴ちゃんだけじゃなくて?弘希も?」
「え、里美は寂しくねーの?」
「私は別に。美鈴ちゃんが彼女なら寂しいのかもだけどそういうわけでもないわけだし。」
……俺だけ?え、まじで?


