居場所をください。




鍵を開け、スリッパを出すと美鈴は今度は俺より先にリビングへ向かった。

ここらへんは完全にいつも通り。


「お邪魔しまーす。」


ずっと会ってなかった上に、仲も良くない里美に向かって遠慮なしにそう言った。


「いらっしゃい。」


「弘希は?」


「部屋にいるよ。
廊下でて右側の部屋ね。」


「わかりました。」


美鈴はそれだけ言って、リビングから出ていった。


「悪いな、突然。」


「ううん、私は別にいいけど…
まぁ正直驚いたけどね。
美鈴ちゃん、私のこと嫌いそうだったから。」


……うん、それは俺も感じてた。


「里美は?嫌いじゃねーの?美鈴のこと。」


「私?私は別に嫌いじゃないけど?
自分を持ってて強くて、いいんじゃない?」


「そ。」


それならいいんだけどさ。


「今日飯なに?」


「んー、なんか美鈴ちゃんってカロリーとか栄養気にしそうで野菜ばっかり。
あとササミフライとかね。」


「最近はわりと好きなもの食ってるけどな。
……ただフライは食わねーかな。」


「え、嘘。」


「揚げ物は唐揚げ以外ほぼ食わねーやつなんだよ。
でも俺と弘希は食うし、気にすんなよ。
美鈴はそんなことで文句言わねーし。」


たぶん。


「そ、そっか。
でもあとなにかもう1品…」


……そんな気遣わなくてもいいと思うけど。
美鈴、わりとなんでも食うのに。