「あ、長曽我部さん
待ってたよ~」
……のんきなやつ。
「…永田、俺を見返すなんてすげー覚悟だな。
楽しみにしてるわ。俺がお前にギャフンと言わされる日を。」
「もう来ますよ。」
「へぇ、すげー自信。」
「もうすでに、小春が美鈴に勝ったことがあるんですよ。」
「出たよ、また勝負。」
「美鈴は黙ってろよ。
で、なにが?」
「ドラマの主題歌、小春に決まったんですよ。
美鈴も申し込んでいたやつが。」
……ふーん、なるほどな。
美鈴落ちたのかよ。
「…そりゃすげーな。
美鈴も負けてんなよ。」
「別に勝とうとしてやってるわけじゃないけど。」
「でも甘いな、永田。
美鈴はHW映画の主題歌が決まったんだよ。
そっちは決まってもどうせ断るつもりだったし、小春が決まってちょうどよかったわ。
な、美鈴。」
なんて俺の勝利の笑みに、美鈴はドン引き。
当たり前だけど。
美鈴はこうやって比べられることが大嫌いだから。
「…はは、悔しいだろ?永田。
ま、でも俺が嫌いなことで永田がちゃんと仕事すんなら、別に俺のことはずっと嫌っててくれて構わないし
俺も、お前が俺のことを嫌うように嫌われ役を全力で頑張ってやるよ。」
……そういや、こいつって前のあのアイドルん時も俺に対抗心を燃やして仕事してたな。
単純なやつ。
「言っとくけど」
なんて、俺が楽しくて笑ってると今度は美鈴が立ち上がった。
「もう私は勝負なんてしないからね。
次、そんなことあったら今度こそこんな事務所やめてやるからね。
いい?わかった?永田さん。」
「……俺かよ。
それに勝負っつったって、今回は小春が美鈴のこと好きだからそんなことできねーっつーの。」
「それに、俺はもう美鈴のマネージャーじゃない。
美鈴だろうが小春だろうが、落ちたら困る。
……それに、今は新人の小春に伸びてもらわなきゃ困る。
小春は美鈴同様、期待の新人なんだからな。
去年のあいつらと違って。
だから永田。
今年はしっかり頼んだからな。
美鈴の時は出来たんだ。
期待してるからな。
わかったらさっさと上に行けよ。山村が待ってるから。
行くぞ、美鈴。」


