居場所をください。




美鈴が会社から出ていって、俺は早々にデスクに戻ってパソコンを開いた。

すぐに、この歌詞の確認をしたくて、USBを差し込んだ。

今までの歌詞が全て保存されている中、一番手前に来ている、見たことのないタイトル。
これが恐らく今回の新曲。


『Season.』


相変わらずな英語のタイトルを開くと、中身は全部日本語。
ほんと、ぶれないよな。

この提出先がアメリカだったとしても、美鈴はこの歌詞が挑んでいくんだもんな。


『今年も一つの季節が終わりを迎え
そしてまた新しい季節へと移り行く

時代の最先端で生まれ生きてきて
そう ここには懐かしいものなんか
なにも残っていないんだよね
懐かしい人でさえ皆去っていくように』


……言葉が強いな。
ロック調か?もしかして


『毎日が進化するここに思い出なんて
なにも残っていないはずなのに
またひとつ遠くなる記憶が寂しくて
そんな思い出にすがりたくなるのに
時に過ぎ行く時間はとても残酷で』


字数も多い。
アップテンポなことだけは、歌詞を見るだけでもわかるわ。
やっと次がサビか……


『また一人 こんな私に手を降った
そのワケはそんな時代にすがりつく
私が嫌になったのか それとも……』


……え、サビはこれだけ?
AメロBメロはあんな長いのに?


『流れる時の中で人は出会い別れ
その残酷さにまた嫌気がさしてくる

変化や進化が素晴らしいことだと
私自身が知っているはずなのに
それにいつまでも怯えてるのは
こんな時代を受け入れたくないから


止まることもできずに走り続けてるけど
こんな時代に誰が流される?
そう これは都合のいい大人たちのための
おとぎ話だったのかもしれない
そこに私の意義はなにもなかったの』


ちょ、これ……
……もしかして、俺に対しての抗議の歌か?


『また一人 私のもとに誰か来て
だけどまたすぐに別れを告げる
私の力量なんて そんなもので……』


だけど、最後の最後で俺は胸を撫で下ろした


『そんな時代のせいにして先回りして
私は全てのことを諦めてたみたい


また一人 また一人と去っていく
そう思っていたのは私だけで
本当は離れたとこで見てるみたい

そうやって私の進化を待っている
その人のためにも進み続けよう
離れてても一緒に進んでいくから


季節でさえまた移り変わっていくけど
変わらないものがここには確かに
存在しているから……』


……サビ3連発で、絞めな。
美鈴らしいな、本当に。