それから数日たち……
美鈴たちが旅行から帰ってきて
「長曽我部さーん!」
……また、会社にうるさいやつがきた。
「もうちょっと静かにこれねーの?
美鈴。」
「だって大声で呼び止めないと長曽我部さん行っちゃうから。」
休みのくせに、昼時に会社まで来て
もう19なのに大声出して俺を呼ぶ。
俺のことをそんな風に呼ぶやつ、ほかにいないからたとえ声が違っても一発で美鈴ってわかるわ。
「で、なんか用があってきたんだろ?」
「あ、うん。
今日仕事何時頃終わる?
長曽我部さんち行きたいんだよね。」
「今日?
今日はとくに問題が起きなきゃ18時には帰れると思うけど。
なんで俺んち?」
「お土産あるの!
里美さんは?家にいる?夜勤とかだったりする?」
「は?里美も?
里美は今はもうほとんど日勤。時間とかなけりゃ家にいるけど」
「わかった!
じゃあ私またあとで来るから、一緒につれてってね。
弘希にはもう連絡したから、家にいるみたいだしね。
じゃ、私高橋と約束あるから行くね~」
美鈴は言うだけ言って去ってったけど
またすぐに戻ってきた。
「忘れてた。これも持ってきたんだった。
今日佐藤さん休みでしょ?
上田さんとかに渡しといてよ。」
そういって美鈴のカバンから出てきたのはUSB。
他のやつらはもう使っていない時代が少し古いこのUSBは他のと絶対に混ざらないように、あえて渡しておいたこの形。
このUSBの中のデータ、入っているものは1つしかない。
「……もう、歌詞できたのか?」
「うん。
っていうか、ちょっと前に書いたものがあったの。
少し直したけど、今回の映画に合うかなと思って。
それとこれもね。」
と出てきたのはSDカード。
「これは?」
「その曲ね、いつかまた一人で作ってCDにしたいなって考えてたの。
パソコンで作った機械の音だけど、曲がもう完成してるから、できれば使って。
USBだとデータ量が多過ぎて入らなかったんだよね。
よかったら、っていうか使って。これ。」
……こいつ、いつの間にこんな成長したんだ?
それじゃあもう録るだけじゃねーか。
佐藤があんなにスケジュール調整してたのに…
「…わかった。
今日中に上田に映画会社に提出させる。」
「うん、お願い。
じゃあ高橋が迎え来るし、また夜ね。
18時にここ来るから。」
「はいはい、わかったよ。」


