「佐藤も今朝、かなり言われてたじゃん。
しかもめっちゃ急な仕事じゃなかったか?
無理言うなって話だよな~。」
……無理って…
「無理なことなんて言ってないと思いますよ、俺は。
だって長曽我部さんはいつもできることしか言わないですし。
長曽我部さんに言われるなんて、それだけ俺はまだ未熟なんだと判断してますけど。」
……佐藤。
「それに、本当にヤバイのは山村さんより、高城さんだと思いますよ。」
「は?え、俺?」
「高城さんって長曽我部さんになにも言われないじゃないですか。
そもそも期待されてないんですよ。だからいまだに現場やってるんじゃないんですか?
なんて、現場やってる俺が言えたことじゃないですけど。
山村さん、長曽我部さんに仕事任されてるじゃないですか。
そんな話してる暇あったら、仕事したらどうですか?
長曽我部さんは見込みのある人にしか、仕事を任せたりしませんよ。
長曽我部さん言ってましたよ。
山村さんのこと、やればできるって。」
佐藤はそういって、自分のブースに入った。
なんつーか…ちゃんとわかってる人はいるもんなんだな。
嫌われ役なんて慣れたもんだったけど。
……わかってくれるやつが一人いるだけで、また嫌われ役頑張れるわ。
「……おい、山村。
なにボーッと立ってんだよ。
お前、やることたくさんあるんだからさっさと仕事しろよ。
お前ががんばんねーと、小春はずっと沈んだままだぞ。
現場が永田じゃ期待持てねーからな。
頑張れよ。」
「……はい。すみません」
…誰も、好きで嫌われ役やってるわけじゃねーんだよ。
嫌われてもいいから、お前らが頭を下げる回数を少しでも減らしてやりたいだけなんだよ。
適当なスケジュールじゃ、絶対にあとで詰まってくるんだよ。
ここにいる全員、給料もあげてやりたいんだからさ、頑張ってくれよ。


