居場所をください。




それから美鈴が戻るまでに8割の仕事を片付けて
夕方、俺はデスクを立った。


ロッカーにジャケットをしまい、荷物も財布とスマホだけ持ち、スマホを確認すれば

『食堂にいるよー』

と、美鈴からLINEが入っていた。


『今から降りる』

とだけ返事をしてポケットにしまい、ロッカーを閉めた。


…16時か。
早かったな、ずいぶん。
本当に絶好調だったんだな。


なんて考えつつ、
佐藤に言付けをしようとまたマネージャールームへ向かおうとすると


「本当、あの若僧なんとかなんねーかな」


なんて話す山村の声が聞こえた。


「長曽我部さんですか?」


……あぁ、俺の悪口な。
もう聞きあきたわ。


「そ、あの御曹司な。
入社して2年で総務課で、俺らの管理まで始めたんだよ。
入社して2年で、なんて普通ありえねーだろ。」


「え、2年で、ですか?
まじですか?それ。」


「まじまじ、超マジ。
入社2年目なんて俺まだ現場だったわ。」


「俺なんていまだに現場ですけど。
山村さんはいつからチーフマネになったんですか?」


「俺?俺は10年目くらいだったかな。
長曽我部さんなんてまだ9年目だぜ?ありえねーわ。
チーフマネやってたのだってたった2年間だけ、しかも五十嵐美鈴。
一回やってうまくいったからって、さらに調子のってほんっとうぜーわ。」


「山村さんには一段と厳しいですしね。
嫌われてるんじゃないですか?」


「はは、別にいいわ。
俺も嫌いだし。」


……知ってるわ。
嫌われんのが嫌で管理職なんか勤まるか。


「なぁ?佐藤。
佐藤もそう思うよな?
お前なんか一段とうるさく言われてんじゃん。」


「え、俺ですか?」


……あれ、佐藤か?
戻ってくんの早。