「長曽我部さん。」
「あぁ、佐藤早かったな。」
「美鈴、絶好調なんで抜けてきました。
佐々木もいますしね。
先程、海外から連絡がありまして」
「海外?ツアーのことか?」
「いえ。
実はアメリカの映画会社で日本の時代の移り変わりをテーマにした映画が作られることになり、
ダメ元だったんですけど応募してたんです。」
「…貴也を、ってことか?」
「いえ、美鈴です。
すみません、主題歌の方でして」
「あぁ、そっちか。
通ったのか?」
「はい。
まさか通るとは思ってなかったっていったら美鈴に悪いんですけど…
でも応募者もすごかったんで正直、かなり難しいと思ってて、なにも準備してこなかったんです。
すみません。
曲の提出期限まであと1ヶ月です。
詞も曲もなにもできていない状況で、引き受けてしまっていいんでしょうか。
今から美鈴にそれを伝えて、美鈴が書けたとしてもそれから曲を作ったり、PVを撮ってたりすると、美鈴にはかなりハードなスケジュールになります。」
「1ヶ月、か……かなり急だな」
「しかもまだレコード会社にも話していません。」
「……わかった。
俺から上田に言っとくから、とりあえず引き受けとけ。」
「スケジュール、大丈夫ですかね」
「1ヶ月間、そのうち美鈴の休みは1週間。
実際3週間か…
……ここのレッスンはキャンセル、ライブの打ち合わせも先に伸ばそう。
バラエティは仮だからこれも断って、雑誌はしかたねーからやるとしても、時間はかなり絞ってもらおう。これは上田に伝えとくから
とりあえず佐藤は美鈴に伝えて、バラエティは断れ。
そんなでかい仕事、断るには惜しすぎる。
これからワールドツアーも回るしな。」
「わかりました。
じゃあちょっと出てきます。」
「佐藤も忙しいのに悪いな。」
「いえ。
長曽我部さんが外れて忙しくなるかなーと思ったんですけど、上田さんのおかげで俺はまた楽してるんで。
失礼します。」
楽してる、な。
どこがだよ。
ここにいる全員に聞かせてやりてーよ。


