「……この海ね、
貴也がいなくなったときにも来たんだ。
朝、夏音からの電話で起きて
テレビ見て!ってすごい勢いでさ
テレビつけたら松野貴也無期限活動休止
って出てて、
貴也の部屋に行っても貴也はいなくて
事務所に行って、社長に会いに行ったら
そこに長曽我部さんもいて、
私は長曽我部さんから話を聞いたの。
……あの時私、頭に血のぼっててさ
長曽我部さんにひどいこと言って…
それでも長曽我部さんは
私を追いかけてきてくれた。」
「うん。」
「貴也がいなくなっても
私は貴也のことは信じていたし
なんていうかさ
貴也は私から離れたりしない
っていう自信があったのね。
まぁ寂しくて仕方ない日もあったし
またこの男は…って思う日もあったけど」
はは、なんて私が笑っても
「うん。」
不器用な貴也は
それしか返事をしなかった。


