「でも、本当美鈴が幸せならそれでいいよ。
俺の無責任な行動で美鈴にずっと
寂しい思いをさせてきたんだし
俺に反対する権利なんてないよな。
……最初、初めてひかるが美鈴を連れてきてから
もう俺どうして接していいかわかんなくて
美鈴は本当に星奈そっくりだから
すぐにわかってドギマギしてて
……でもあの日から、俺にできることなら
美鈴のために何かしようって決めてたんだよ。
まぁ結局なんにもできなかったけど。」
社長はそういって
少し儚げに笑った。
「…初めて会ったときは思わなかったけど
でもそれ以降、私のことを
五十嵐さんって呼んだり美鈴ちゃんって呼んでたり
かとおもえば美鈴って呼んだりしてたから
なんて安定感のない人なんだ
ってずっと思ってたんだけど
あれは接し方がわからなかったのね。
納得納得。」
「あー、まぁ…」
「でもね、きっと貴也は
親がいない私だから、好きになったんだよ。
きっかけは違うかもしれないけど
でも私から離れられないのは
私が親に捨てられた子供だから。
じゃなきゃきっと、
私はここまで一生懸命になれなかったし
そもそもここにいることだってなかった。
親を亡くした悲しみもわからないし
はっきり言って、私の魅力なんて
これっぽっちも備わってなかったと思うんだよね。
……だからさ、お母さんと社長の子供で
施設で育ったことも
きっと今の私を手にいれるためには
必要なことだったんだよ。
施設にいた頃は本当にどん底で
迎えに来たとしても、来なかったとしても
絶対に親のこと突き止めて
殴ってやるって決めてたの。
迎えに来た場合と、来なかった場合
それぞれ意味は違ってくるけど
それでも殴ってやるって心に誓って。
……でもね、やっぱり私は殴れなかった。
だってやっぱり今の私があるのは
辛い過去があったからだもん。
社長のことは憎んでない。
だからもし、過去の自分とどこかで会えるなら
未来は輝いたものだって伝えたいよ。」
あんなに、辛くて苦しくて
儚い毎日だったけど
私の未来は嬉しいこと、楽しいことが
たくさん溢れていて
そして、何人もの愛しい人までできたと
私の未来は素晴らしいものだと
教えてあげたいよ。
何のために生まれてきたのか
わからなかった私に伝えたい。
そんな日々でも、未来のためには
大切な過去になるって。


