お風呂に入る前、さっき別れたばかりなのに
長曽我部さんに連絡をした。
今度はもちろん、妹として、ね。
ゆっくりお風呂につかって
出た頃にはもう3時を回りそうだった。
「……あれ、まだ起きてたの?」
「美鈴の書いてるとこ、
写メでも撮ろうかと思って。」
「えー、それ早く言ってよ。
お風呂あとにすればよかったじゃん!」
「今さらそれ気にすんなよ。」
さっきまで寂しそうだった貴也は
もうすっかりいつも通り
自信満々な貴也に戻っていた。
「まぁいいけどさ。
よし!じゃあ気合い入れて書くわ。」
「なんでもいいけど。
ほらよ、ペン。それと本籍とかこれ。」
「ありがと。」
渡された婚姻届にはすでに
社長と、施設のママの証人サインがされていた。
「…これ、貴也がもらいに行ったの?」
「他に誰がいるんだよ。
俺ら未成年の場合、保護者の同意書もいるし
まぁそのついでってのもあるしな。
一応、俺の保護者は社長になるし。」
「私は?」
「長曽我部さん。」
「……そっか。」
貴也が一人でそこまでしてくれていたことに
私は全く気づきもしなかったから
前から考えてくれていたこととか
一人で準備してくれてきたこととか
そういうことすべて含めて
本当に嬉しくて、心がすごく温かくなった。
だから、一文字一文字
大事に大事に書いた。
お母さんからもらった"五十嵐美鈴"
その名前を大事に大事に……


