居場所をください。



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「ただいま。」


「おかえり。

見てたよ、生放送で。」


「あぁ、沖野さんのライブ?

聞いてた?」


「さっきな。帰るときに長曽我部さんから。

……ちょい来て。」


コートを脱ぎ、ハンガーにかけていると

貴也が呼んだから

私もソファに座ることにした。


「…これ、書いてくれんの?」


そうぶっきらぼうに言う貴也の手には

"婚姻届"と書かれた紙が1枚。


「……え、今?」


「今っつーか…その

……今日出しに行けねーかなって…」


……貴也らしくない。

いつもは自信満々なのにね。


「……明日、長曽我部さんが籍入れる。

だから…その前の方がいいかな、と」


「…それだけなら、急ぐことないんじゃない?

今日だって、今から寝てさ

夕方からは初詣いって、打ち上げあって…」


「……俺と結婚したいんじゃねーの?」


「そりゃもちろんしたいよ。

嫌とかそういうことじゃなくて

順番って言うか、他にやることだって…」


「そう言って、後回しにしたいだけじゃね?」


「だからそういうことじゃなくて

明日でも明後日でも「今日がいいんだよ。」


「……なんでそんなに今日にこだわるの?」


「美鈴の記念日は、いつも1日だから。

……美鈴の誕生日も、デビューの日も

美鈴の母親の誕生日も。

……そこに、俺との記念日が入りたかっただけ。」


そういう貴也はいつもと違って

本当に自信がなくて、

寂しそうな顔をしていた。


「……わかった。じゃあ書くよ。

その前にお風呂入ってくるね。」


そうしてしまっているのが私で

……貴也が不安になってるのがわかるから

その気持ちもわかるから

私はその紙に、サインすると返事をした。


なにより、私も同じ気持ちなのを

わかってほしかったから。


「あ、貴也は先にサインしておいてよ。

先に寝てていいからね?」


私はそれだけ言って、

とりあえずお風呂で疲れをとりたかった、