「よし、おっけ!

あとは移動中にやろう!

美鈴ちゃん、行くよ!」


「あ、はい。

じゃあ高橋、私いくね。

打ち上げ来るでしょ?

また夜にね。お疲れ。」


「美鈴!」


「ん?」


「…よかったな。おめでとう。」


……なんだ、それが言いたかったのか。


「ありがと。」


私は笑顔で返して、

真っ暗な廊下を佐々木さんの手を掴んで

明るくなるところまで一緒に歩いた。


「あ、終わったか。

これ美鈴のバッグな。行くぞ。」


「え?長曽我部さんが一緒にいくの?

佐藤さんじゃなくて?」


「……家に帰るまでが今日だからな。

俺はまだ美鈴のマネージャー。

行くぞ。」


「……うん!」


私はまた、長曽我部さんの手を握って

次の仕事へと歩き始めた。


「あ、貴也は?」


「先帰らせた。

でも起きて待ってるってさ。」


「はは、そっか。」


「で、本当に結婚する気か?

まだ付き合って1年7ヶ月だろ。

しかも18歳。デビューして2年目だっつーのに。

しかも高校生だろ。」


「逆になんでだめなの?」


「そりゃ安定してないから。

気持ち的にも、仕事的にも。

一時の感情に流されんなよ。」


「長曽我部さんは後悔してるの?

里美さんと結婚して、離婚したこと。」


「してるからいってんだろ。」


「……付き合ってるのはいいのに

結婚はダメなの?」


「結婚となると、

相手に求めるものが変わってくるんだよ。

美鈴は次のツアーももう動きだす。

貴也だって舞台で全国回る上に

映画も決まってる。

結婚したって会える時間は少ない。」


「だからこそ結婚するんじゃん。」


わかってないな、長曽我部さんは。