「……あほか。

そんなの、マネージャーとして

当然じゃねーかよ。」


まだ涙は止まらない。

だけど私は頭をあげた。


「……ありがとな。

かなりきついスケジュール組んでも

ちゃんと俺についてきてくれて。

お前がちゃんと咲いたのは

お前の努力の証。忘れんなよ。」


「……はい。」


私が力強く返事をすると

長曽我部さんは私の頭に手をのせて

すぐにステージ袖へと戻っていった。


『美鈴、ラスト2曲。

時間がないからな。』


そうイヤモニから聞こえる長曽我部さんの声は

もういつも通りで、

私ももう、涙は拭った。


そして切り替えて歌うために


「佐藤さんティッシュ!」


私はまた、鼻水を噛むことにした。


「はいはい。」


「へへ、ありがとう。」


「俺さ、長曽我部さんの涙って初めて見たよ?」


「え、泣いてた?」


「涙こらえられなくなって

もとに戻ったって感じ。

あれはかなりキテるね。」


「はは、そっか。

……よし。


じゃあアンコール、まだまだいくからねー!」


私はまた仕事モードに切り替えて

笑顔を、客席へと向けた。