居場所をください。




『私って本当になんにも持ってなかったんです。

親もいない、お金もない、知識もない

……感情もなかったし、知らないことも

たくさんあったんです。

だけど、そんな私にある人が

いろんなことを教えてくれたんです。

私の親のことも、世界がこんなにキレイで

私がどれだけちっぽけかも。

優しい時間をもつこと、

こだわる夢をもつこと、

純粋な子供でいる時間をもつこと、

人生、こんなに楽しいんだって……

私に愛というものを教えてくれた。

そのすべてをたった一人の人が

教えてくれたんです。

……その人への、感謝の歌です。』


『なるほど。

実は番組調べで、五十嵐さんが

この賞を特別求めていた

という情報が来てるのですが

それはどうしてですか?』


『……その、私の恩人が

欲しがったものだったからです。

私の最初の目標でした。

だから今は本当に嬉しいです。

心から、応援してくださった方に

感謝しています。』


『そうですか。

それでは聴いていただきましょう。

今年、ベスト・オブ・アーティストに選ばれました

五十嵐美鈴さんで

ぜひこの歌を歌いたいと希望がありました

"ヒカリ"です。どうぞ。』


「え、ベストオブ…」


モニターを見つめ、

長曽我部さんはそれだけ言って固まった。


「みんなのおかげで

ベスト・オブ・アーティスト

いただきましたー!

本当にどうもありがとう!」


私がそういうと、

凛音ちゃんはピアノを弾き始めた。