「美鈴、そろそろ始まる。」
「うん。」
といってもバンドとダンサーの
introductionから。
私の出番はそのあとだ。
……でも、不安と緊張は
時間関係なく襲ってくるもので…
「ふぅー…」
私はまた、長曽我部さんに抱きついた。
これも卒業しなきゃいけないのに
長曽我部さんが私を包む腕と
頭を撫でる手がすごく心地よくて
どうしても、やめることができない。
「始まったな。」
会場に響き渡る声と、
録音した、始まりを合図する私の声。
そしてしばらくして聞こえるギターの音と
たくさんの足音。
私の出番もあと少しだ。
「…ちゃんと聴いててね。」
「聴いてるから、ちゃんと伝えてこい。」
「うん!」
「ほら、スタンバイ。」
「はーい。」
長曽我部さんに背中をポンと叩かれ
私は長曽我部さんから離れて
セリへとしゃがんだ。
「行ってきます!」
私が笑顔でそういうと
「頑張れよ!」
存在にまったく気づかなかったけど
いつの間にかいた高橋がそういうから
また高橋と拳をぶつけ合い、
introductionが響き渡る中
私は真っ暗なステージの上へと立った。
静まった会場に、私を呼ぶ声。
今日も私のショーが始まるよ。


