━━15分後
「美鈴、そろそろ行けるか?」
長曽我部さんが迎えに来た。
「うん、行く。」
ずっと居座った着替えルームを出て
長曽我部さんの手を握って
またこの暗闇の廊下を歩く。
どうしてこんなに暗いのか
それはやっぱりわからないけど
向こう側に見える明るい場所に向かって
足が自然と急いでしまう。
「今日ののどの調子はいいか?」
「完璧だよ。」
初めてかもしれない。
この道のり、長曽我部さんが話しかけてきたのは。
いつも、ただただ静かに
私の足音だけが響いていたから。
この手も、私が転ばないようにと繋がれているのに
今日はいつもより力強く感じるのは
なんでだろうね。
「今日ね、貴也とレコード会社の屋上から
夜景を見てきたんだ。
イルミネーションでも見に行こうって言ってたのに
見えたイルミネーションもさ
夜景の一部だったよ。」
「へぇ、そうなんだ。」
でも、街頭や家の灯り
それらを含めて綺麗だった。
どんなイルミネーションよりも。
「……よし、今日も頑張ろ。」
そうしてそこにいるみんなのもとへ
自然とまた、足が早まった。


