居場所をください。




私はすべての支度を終えた。


「あ、ねぇ、まだ時間ある?」


「あー、あと10分くらいなら。」


よかった。

私は夏音に電話を掛けた。


『プルルル…もしもし!』


出んのはや!


「夏音?いま平気?」


『うん、たった今学校終わったとこだよ。』


「よかった。

今から家帰る?」


『今日はこれから瑠樹くんと出掛けるよ!

どうしたの?』


「ううん、なんでもない。

あのね、今日は8時からT局の歌番組見て?」


『え、なんで?』


「いいから。

あと高橋に代わって。」


『うん、わかった。


…………………………もしもし?』


「あ、高橋?

あのね、私今日デビューの日なの。

で、今日は地元から出ないで。」


『は?なんで?』


「いろんなところに私のポスター貼ってあるから。

家とかだと助かる。ファミレスとか。

夏音に夜まで内緒にしておきたいから。」


『了解。』


「あ、あと今からN局で生放送出るから

N局も見ないで。」


『了解。』


「美鈴、今日からCMも始まったぞ。」


「えぇ!?なにそれ、聞いてない!

高橋?あのね、テレビもダメだ。

CM流れてるみたい。」


『はいはい、夜の歌番組だろ?

夏音にネタばらしするの。

それまでは俺一緒にいるから。』


「うわ、最高。ありがと。

ごめん、今から生放送だからもう切るね。」


『おう、がんばれな。』


「うん、ありがと。

じゃーね。」


私はそれだけいって電話を切った。