居場所をください。




そのあときた、松野家のお墓は

やっぱり綺麗で、大きくて

他のものとは違っていた。


「…何度見ても立派なお墓だねぇ。」


「って言われても反応困るわ。」


「去年の今ごろは

まだおばさん、生きてたんだよね。」


一度しか会ったことはないけど

あんなに明るくて、元気だったのに

今はもういなくなってしまったことが

本当に信じられない。

実はまだどこかで

元気に暮らしてるんじゃないかって

そう思いたくなるよ。


「母さんはずっと元気だったよ。

人間ってあんなあったり

死ぬんだなって思ったけど

でも最期はあんま苦しまず死ねたから

それだけでもよかったのかもな。」


そういう貴也の表情は

決して暗くもなく、悲しそうでもなく

愛しそうに言っていて

こんな息子に看取られたおばさんは

本当に幸福者だと思った。


「貴也が立派に育ってて

おじさんもおばさんも喜んでるよ。」


「はぁ?」


いい息子を持ったものだ。


「よし、火ついた。」


一箱買ったお線香。

半分は私のお母さんに

そしてもう半分はここに火をつけて

まとめて寝かせて供え、手を合わせた。


いつか、正式にあの指輪を継ぐことを

心に願いながら。


「……長くね?」


「え、逆に早くない?

さっきはあんなに長かったくせに。」


「美鈴もな。

さてと、行くか。」


「うん。」