居場所をください。




「ま、冷めないうちに食お。」


「うん、いただきまーす。」


うわー、すごい。

お肉もすごいけど焼き加減もすごい。

おいしそう。


「あ、勝手に岩塩使ったから。

土産にもらってきたやつ。」


「うん、いいよー。」


食べるよ、私は。


「……んんー、あまーい。

すごい。

社長がいなきゃこんなの

なかなか食べられないよー。」


「え、社長とは食うわけ?」


「社長とのときは

最近は鉄板焼が定番かな。」


「俺のときとすげー差。

ラーメンとかなのに。」


「はは、そうなんだ。

でもそれは会ったからご飯行こう、

みたいなやつでしょ?

私とのご飯は長曽我部さんが

ずっと前から予約をとって

やっと行ける、みたいなのだもん。」


「え、会社で会って飯いくとかねーの?」


「ないない。一回もないよ。

あの人はあの人なりに

いろいろ気にしてるんだよ、きっと。」


私と二人きりで外で会ったことは

一度たりともない。

……それどころか、会社でも

二人きりになったことはない。

必ずいつも長曽我部さんがいる。

気を付けすぎてるのか

私に気を遣ってるのかわからないけど

私にだけ、壁を感じる。本当に。