水木先生を呼びにいった佐々木さんより
打ち合わせのためにスタッフの方が先に来て
結局水木先生は私の楽屋で
また待ちぼうけです。機嫌がちょっと悪いです。
「すみません、お待たせしました。」
「いや、まぁ五十嵐が悪い訳じゃないからな。
それより時間がないからさっさと始めよう。」
「はい。お願いします。」
水木先生は私にはやっぱりちょっと優しくて
その優しさが厳しさ全開で出てくるから
たった数十分のこの声出しすら
めちゃくちゃ厳しくて
いつも、心がくじけそうになる。
そんなにも私の歌がダメなのかと
自信がなくなるくらいに。
…なのに、そんな時は決まって必ず
「伝えたいんだろ。」
そう、私には問いかける。
たったそれだけ。
たったそれだけのことで
私の気持ちをまた奮い立たせてくれる。
他にはなにもできない私が
素直に気持ちを伝えるには
これしかないんだって…
伝えたい誰かが私にはいるんだって
それをちゃんと思い出させてくれる。
だから、私はこの厳しい先生に
これまでずっとついてこれたんだ。
「━━よし。いいな。
ちゃんと伝えてこい。」
「はい。ありがとうございました。」
そうやって誰かのために
他の誰かに支えながら
私は私にできることを
最上級に頑張るだけなんだ。


