「美鈴ちゃんたちって
本当にラブラブだよね。」
私の背中をぐいぐい押しながら
ユリ姉はそんなことを言い出した。
「私の彼氏なんて
私の踊ってるところ
みたことないと思うよ?」
「はは、それじゃあ私の歌ってるところも
全然見たことないんだろうね。
悲しいわ~。」
「でもさ、私は大会とか自主練とか
一般人でも気軽に見に行けるチャンス
たくさんあるのにさ。」
「でもわかんないよー?
ユリ姉は私と一緒に
テレビ出るときだってあるわけだし
言ってないだけでテレビみてたり
もしかしてライブ来てくれてるかもじゃん?
私は貴也の舞台見に行くときは
いつも先に言っちゃうんだけどさ
こっそりトークショー見たことだってあるよ。
まぁあのときは付き合ってた訳じゃないけど
恥ずかしいだけかもしれないし。」
「まぁたとえそうだとしてもさ
なんていうか愛を感じるじゃん!?
美鈴ちゃんの彼氏からさ。
貴也くんと話したことないけど
みてるだけで美鈴ちゃんのこと
大好きだって伝わってくるもん。
練習見に来ちゃうくらいだし。
素直に羨ましいよ。」
「んー…まぁね?」
でも貴也も最初はやっぱりわからなかった。
好きだとか全然言ってくれないし
最初の頃は不安にもなったし
それで喧嘩になったこともある。
「……たださ、私と貴也は
いつか終わりが来ることを
ちゃんとわかってるからだと思うんだよね。」
「終わり?」
「永遠なんかないって。
いつか誰にも守ってもらえなくなるってことを
他の人より早く知ることができただけ。
私も貴也も自分の居場所を自分で守ることで
必死になってるだけだよ。」
きっと、この世の多くの人は
親を失うときには
すでに自分には守るべきものができていて
そして誰かに守られているから
私たちの気持ちはなかなかわからないんだ。
いつか親に守ってもらえなくなる日が来る。
多くの人が、帰る場所がないということを
知らずにこの世を去っていくんだ。
帰る場所がある幸せを知らずに
この世を去っていく人もいるんだ。
私たちはもう失いたくない。
誰かのいる家を。帰れる場所を。
だからこそ、自分の人生に真剣なんだ。
たったそれだけのことなんだよ。


