居場所をください。




「ちょっと急ぐよー。」


「どこ行くの?」


「14時半からレッスン入れたから。

水木先生には説明済みで

2時間歌っておいで。

17時からレコーディングね。


で、MVはOKでたからそのまま進めるって。」


「ん、りょうかーい。」


「………で、なんで咲までいるわけ?」


業務連絡が終わったところで

佐藤さんは急にオフモードになった。


「咲さん、今日はもうないんでしょう?

私これからレッスンだし、

2時間デートでもしてきたら?

なーんて。」


なんて笑っても、この二人はなにも話さない。

つまらない。佐藤さんのデレる瞬間を

見てみたいのに。


「あ、そうだ!忘れてた。

美鈴ちゃんにお土産。ハワイの。」


「え、私にですか?

ありがとうございます!」


と渡されたのはひとつの箱。

重さからいって…食器かな。


「全然ハワイらしくないけど、

夫婦茶碗だから

松野くんと使ってね。」


「はは、夫婦茶碗か。

私も貴也もご飯大好きだし嬉しいです。

お茶碗でお揃いは初めてだ~」


「そう?よかった。」


………それよりさ、二人はなにか喋らないの?

ねぇ、なんか喋ってよ。


シーンとしちゃったじゃん。ねぇ。


「…………はは」


かと思ったら、突然咲さんが笑い始めた。


「ど、どうしたんですか」


「静かだな~と思って。」


「だって、二人とも喋らないから…」