居場所をください。




「………まぁ、わかったよ。

でもひとつ聞きたいんだけど」


「なに?」


「高橋ってバイオリン弾けるの?」


そこだよ、まず。

高橋がバイオリンって。おかしいだろ。

似合ってないにもほどがあるぞ。


「まぁ、あいつんちはいい家庭だからな~。

弾けてもおかしくはないと思うけどな。


つーことで、美鈴。これ。」


「………はい?」


なぜか用意されていたのは

男子の制服。しかも学ラン。

少なくとも、ブレザーの一高のものではない。


「俺の中学んのだけどさー」


「嫌。」


「え!なんで!」


「着る意味がわからない。」


「だってさ、美鈴が金いれたら

フラッシュモブ以前に

美鈴に人が集まるじゃん。」


「いや、だって髪の毛とかあるじゃん。」


「大丈夫。実は俺演劇部なんだよ。」


「嘘だね。」


「いや!ほんとだって!

………行ってねーけど。


まぁいいや。で、ズラも借りてきたし。

な、マジで頼むわ!

ここの生徒にやらせたらまじでヤラセだから

客の美鈴に頼むしかなくて!」


「………ったく仕方ないなぁ…

まぁ高橋もかわいそうだし

一応2ヶ月間お世話になった

先生への恩返しってことで

引き受けてあげるよ。」


「やったね!マジ感謝!

このままじゃ俺らも解放されねーからさー。

ちなみにいれる金は美鈴の自腹で。」


「はいはい、わかったよ。」


仕方なく私は

服の上から学ランを着た。

こんなの着たの初めてだよ、全く。