居場所をください。




「で、だよ。

俺らのクラスはまずあそこに

瑠樹をたたせて、

瑠樹の前においてある箱にお金が入ったら

瑠樹が、持ってるバイオリンを弾き始める。

そしたらだんだん吹奏楽部のやつらが

集まっていって、みんなで演奏する

ってなるわけだよ。」


「へー、なるほどね。

じゃあ吹奏楽部の人たちはどこかですでに

その機会を待ってるわけだね?」


「そ。」


「でも、朔也たちというか

ここにいる人たちは何をするの?」


「歌を歌う。」


「………歌?朔也が?へー。

曲は?」


「アメイジンググレイス」


「え。

…や、あれって歌っても

女だけでしょ?男も歌うわけ?」


「まぁそれは俺らのやり方だし。」


しかもクラシックって…

どんだけレベル高いんだ……


「で、だよ。

それはいいんだよ。

たださー、見てみろよ。

そもそも誰かが金入れなきゃ

始まるもんも始まらねーだろ?

窓から瑠樹を見て笑ってるやつもいるから

注目はされてるだろうし

ぶっちゃけフラッシュモブって

バレてるとは思うんだよ。

だけどとにかく金入れなきゃ

はじまんねーからさ。

だから美鈴、金いれてくんない?あそこに。」


「いや、やらせじゃん。それ。」


「でもそうでもしないと

なんか瑠樹がかわいそうだろ?

もうスタンバイして一時間たつし。

そもそもグラウンドに人がいないからさー。

中庭にはいんのに、グラウンドには来ない。

だから頼むよー。」


………確かに、

高橋のたつ200メートルくらい校舎側には

どこかのクラスのカフェがあって

なかなかの繁盛具合だ。


………確かに、ちょい高橋がかわいそうかも。